長谷川彩織Saori Hasegawa

長谷川彩織は気にも留められないような絵画の制作を心掛けている稀有な作家である。

彼女はキャリアの中で小作、大作問わず「迷子の風景」シリーズを一貫して描き続けている。「迷子の風景」シリーズは迷子になって気が急いている時、周りをしっかり見渡す余裕はないがそこにあったかもしれない風景を描いた、又は意識の流れの中で迷子になってしまっていた風景を描いた作品郡である。気もそぞろとなり周囲をはっきり認識していない様を絵画で表現するために、鑑賞者の焦点が一点に向かわず均一に見渡せるような画面構成を持っている。その均一な様子は生の植物と写真に撮った風景を同じ画面に構成し、同時に描く中で溶け合い、独立した1つ1つの事物から1つの風景へと形を変える中で作り出されているのだろうか。また意識的に空気遠近法を用いず、遠くの物も明瞭であり色彩もはっきりと描く、強調されすぎない色彩等、工夫が見て取れる。

しかし長谷川は作品のテーマとしてこのような表現を用いるのに留まらず、作品自体が素通りされた風景のようであってほしいと考えている。本人曰く「理想を言えば、展示されていても気にされず通り過ぎてしまうような作品が理想」と語っており、画家であれば当然持っているだろう名誉欲を感じさせず、1つのテーマを追求し描き続ける仙人のような姿勢に私は感動してしまった。

 

「迷子の風景」と題する作品を制作しています。生の植物と写真に撮った風景を同じ画面に構成し、描いていく中で次第に両者は動き始めます。互いに絡み、共生するように混ざり合っているかと思えば、再生と破壊を繰り返しながら広がり、風景を形成していく。二つの間で繰り返すリズムは風景の前に佇む人の意識を記憶や空想へと導き、彷徨わせます。そんな繰り返される儚くも力強い循環の中で迷子になれたらと思っています。 -長谷川彩織-

 

1992
埼玉県に生まれる
2010
埼玉県立芸術総合高校(美術科)卒業
2014
多摩美術大学(美術学部 絵画学科 油画専攻) 卒業
2016
同大学大学院(博士前期課程 美術研究科 絵画専攻)修了

個展
2015
「 個展-ちょっとだけ迷子-」なびす画廊(東京)
2016
「 個展-今いる場所から今いる場所へ-」画廊るたん(東京)
2017
「 HasegawaSaori solo Exhibition」GalleryLVS(韓国・ソウル)
「長谷川彩織展」 JINEN GALLERY(東京)
2018
「長谷川彩織展」 JINEN GALLERY(東京)
2022
「 In the city 」 KATSUYA SUSUKI GALLERY(東京)

 

主なグループ展
2011
「 DISCOVERY 2012 展」KEYgallery&青樺画廊(東京)
2013
「  ご!展」DESIGN-FESTA-GALLERY(東京)
2014
「 etteda・∞ 展」Dongduk ART Gallery(韓国・仁寺洞)
「 卒業制作展」5美大 新国立美術館(東京)
2015
「 etteda・∞ 展」BankART Gallery(神奈川)
「 多摩美術大学 校友会 小品展」文房堂(東京)
2016
「5 美大卒業制作展」新国立美術館(東京)
「多摩美術大学 卒業・修了制作展」多摩美術大学(東京)
「SICF17」スパイラルホール(東京)
「ASYAAF」DDP(韓国・ソウル)
「Derby 展」Gallery KINGYO(東京)
「Exist Vol.14 展」JINENGallery(東京)
2017
「 草原展」Gallery KINGYO(東京)
2018
「 駿馬展」画廊るたん(東京)
「In the air 展」フリュウGallery(千駄木)
2019
「 Art Central HK アートフェア」MASAHIRO MAKI GALLERY(香港)
2021
「3331 ART FAIR」Bohemian’s Guild(東京)


2014
神山財団奨学生 第一期生
2015
「多摩美術大学 校友会 小品展」文房堂 チャレンジ賞受賞
金谷美術館コンクール2015 褒賞・入選
2016
Next Art 展2016(朝日新聞社)推薦作品
うたづArt Aword 2016 入選
神山財団 卒業成果展 優秀賞
2017
OME ビエンナーレ2017 入選
第37 回三菱商事アート・ゲート・プログラム 入選
「多摩美術大学 校友会 小品展」文房堂 チャレンジ賞受賞
2018
「多摩美術大学 校友会 小品展」文房堂 チャレンジ賞受賞
2019
第43 回三菱商事アート・ゲート・プログラム 入選
2020
Arte Laguna Prize 14 ファイナリスト
2021
NONIO ART WAVE AWARD 2021 岩渕審査員特別賞受賞