終戦記念日に合わせた特別展示。

震災や戦争など、一貫して社会問題やそれを取り巻く人々にスポットを当てるアーティスト毒山凡太朗による一作。

スチールの箱。無機質な箱。無彩色で飾り気の無い箱。厳重に閉じられた箱。
鍵穴を持たない南京錠が取り付けられたこの作品には平和が入っているという。毒山本人に尋ねても平和が入っているとしか答えない。この箱の中身を見るためにはもう叩き壊して見るほか無い。平和の中身を知るために暴力的な手法を取らざるをえないのは人類の歴史に対するアイロニーだろうか？

目の前にしてみると平和の形を想像してしまう。
かわいい人形？思い出の写真？平和と書かれた紙？お土産屋に売ってる缶詰のように閉じ込められた平和な土地の空気？
自分の平和が突き付けられる。もしかしたら何も入っていないのかもしれない。でもここに平和があるかもしれないと思うと少し希望を感じてしまう。

箱の中身に希望を見出す自分と、実際にそれを見るためには取らざるをえない方法。その目的と手段の間にある道徳的な乖離を嫌でも思い知らされる。