2023. 10. 7 ‐ 10. 29

中村葵 Aoi Nakamura 「延寿土竜 野良寿限無 ENJUMOGURA NORAJUGEMU」

 

この度ボヘミアンズ・ギルド・ケージでは中村葵による個展を開催いたします。

発語によりコミュニケーションの印象を変化させる中村の映像作品。彼女の作品は一つの物語の形式を取り、古いビデオゲームのような不気味さと非現実感を持ちながら、語り手を用意することにより介在する他者性を孕ませようと試みます。『物語』が持つ鑑賞者の固定観念を刺激せずに、その世界のあたりまえ、ルールに没入させる特性。この前提の上で、物語の寓意性を利用する中村の鑑賞者への関与の仕方は啓蒙にも近いかもしれません。

本展ではモグラの持つ伝承から、不老不死の可能性へ思考を跳躍させようと彼女は試みます。理知的でありながらどこか狂気染みた中村葵の世界を是非ご高覧ください。

 

ステートメント

「モグラは太陽の光で死ぬ」という話がある。
普段地中にいるモグラが地上で死んでいる姿を見て「太陽の光に当たったからだ」と思ったのだろう。モグラが死ぬのは地上だけではない。地中でも死んでいるモグラを人が見ないだけである。地上での死の多くは、太陽光ではなく空腹によって起こる。野生の彼らは毎日体重の半分ほどを摂らないと半日で死んでしまうが、それは彼らの体が、 食べたもので常に、ものすごい勢いで入れ替わっているということでもある。 それは偶然にも「土竜(モグラ)」という漢字が、本来彼らが食す「ミミズ」という意味を持っていることと奇妙な一致を果たす。 モグラは「食べているもの」が、その名前と体の多くを占めているのだ。

モグラをモチーフに、名前と身体、自己同一性に関わる物語を制作する。 長寿への願いが名前の上で空転する落語「寿限無」に触れながら、不老不死が通常になった未来の物語を描く。

 

撮影:鐘ヶ江歓一

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Bohemian’s Guild Cage

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