2023. 8. 19 ‐ 9. 3

今枝祐人 Yuto Imaeda 「錆夢詩景」

この度ボヘミアンズ・ギルド2階では今枝祐人による個展「錆夢詩景」を開催いたします。

31音、57577の五句を基調としながらも破調さえ楽しむ短歌。今枝祐人は短歌集も出版する歌人であり、その表現を現代美術の分野にまで必然性を持って押し広げようとしています。

飛鳥時代に誕生したといわれる短歌は、現代においてより軽やかな進化を辿ってきました。従来の言葉の意味合いを投げ捨てるようで、今の時代にもっとも合った言葉の形を模索するようでもあり、形式を縛りと捉えるのではなく、定型があるからこその自由に成り方を問うような現代短歌は言葉を水物として、今を捉える媒介としての役割を強く意識しているようにも感じさせます。

本展において、作家自身の日常生活から編み出した短歌を、鉄に刻み付ける作品シリーズを展開いたします。鉄に刻まれたこれらの作品は徐々に錆びていき、発生した瞬間からの鮮度を如実に指し示します。言葉の風化、劣化。言葉が時代に伴い古びて意味が遠のくという暗示を、このシリーズは身体的に体感、想像させてくれるのです。また鉄の質感や挿絵のように入り込むイメージは一つの短歌を自ら装丁しているようにも感じさせ、白地に黒で抜かれる印刷物と受け手にとって違う意味合いを抱く可能性を内包しています。

言葉をメディウムとして用いた今枝祐人の提示する新しい詩体験をぜひご体験ください。

 

ステートメント

私は自身の詩や短歌を出発点として、言葉をどのように相手に伝えるかという制作に取り組んできました。 今回は錆という現象に注目して、変化する、消えゆく、儚さというイメージから言葉を伝えたいと考えています。 普段、私は散歩というリサーチを通じて、日常風景から詩を見つけ出しています。 その何気ない風景に隠された不確かな言語感覚を、儚い錆を用いて表現したいと思っています。

■プロフィール

2002年愛知県生まれ。 高校2年生から短歌を始め、2021年に歌集『きたころも』、2022年に歌集『あたらしいあたしたちいたらしい』を出版。 2020年に東京藝術大学 先端芸術表現科に入学、現代美術を専攻する。 現在は、アイデンティティーである短歌や詩を用いた、平面作品やインスタレーション作品を制作中。

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